茨城県常陸大宮市地域おこし協力隊の間瀬です。
常陸大宮市には市民が主体となって運営しているイベントが数多くあります。今日はそのイベントの中の一つ『川原の音楽会』の舞台裏を、実行委員会の倉田稔之(くらたとしゆき)さんにお聞きしました。
開催しようと思った理由をお聞かせください。
色々と理由はありますけれど、一番の理由は、このイベントを通して地元の人たちに今一度郷土に誇りを持ってもらいたいということです。川や自然を守っていこうという意識を高めるきっかけになればいいと思っています。
家和楽の川原を会場に選んだ理由をお聞かせください。
今回は去年に続いて二回目の音楽会ですが、実はもっと前に一度この場所で小さなコンサートが開かれて、それがとても評判が良かったそうです。そのときの関係者が「この場所で音楽会をもう少し大きな規模でやりたい。ついてはそれを手伝ってもらえないか」という相談がきっかけです。
川の向こう側は岩壁になっているでしょう。それが音響板のようになり、音がよく響くのです。演奏する音楽、川の音、小鳥のさえずり、水郡線の音、そういった音の全てを聞くのには絶好の場所なのです。
和紙を色々なところで使われていますね。
去年はクラウドファンディングで運営資金を集めたのですが、今回は使わずにお金を集めることにしました。協賛金を募ってはいますが、それだけに頼るわけにもいかず、何か商品を作って売ろうということになりました。
そこで目を付けたのが、地域の伝統産業である和紙を使った商品開発でした。
(ここで、倉田さんが商品を取りに行くため席を外します)
(私はその間にオフィスの写真を撮らせていただきました)
(仕事人のオーラを感じるデスクですね)
(ガンプラに似ていますがちょっと違う? これはザク?)
(倉田さんが戻ってきました)
団扇を作りました。全部で15色、合計で60本作りました。一本500円で売ろうと思っています。原価からするとほとんど儲けはない状況ですが、今後の商品開発を見据えての試みだと思ってやっています。いずれはお金も儲けたいですね(笑)
当日の会場に設置する協賛金の箱も和紙で作りました。
ちなみに団扇の前に作った商品がこれです。
作りはしたものの、こんな置物は誰も買わないだろうという結論になりました(笑)
準備の様子を拝見していますと大変お忙しそうですね。
忙しそうに見えますか? でもそんなことないですよ。
私は過去にもイベントを企画したことがありまして、そのときは自分たちでやり過ぎてしまいました。
水戸市で3000人くらい集めたイベントだったのですが、動いていたのが私を含めて5、6人だけでした。成功はしたのですが、やりきった後にあまりにも疲れ果ててしまって、もうこうはなりたくないと思いましたね(笑)
そのときの経験から、今は自身が燃え尽きないように多くの人の協力を得て準備を進めていますので平気です。
たとえば団扇を作るときも、別に手伝ってくださいと頼んだわけでもないのですが、手伝いたいと言ってくれる人が3、4人いるのです。痛みや想いを共有していると、大変に感じることはなくなりますね。
そして、みんなが楽しんでやっています。強制や無理矢理でやっている人はいません。委員会が開かれたあとに、近くのファミリーレストランで深夜十二時までおしゃべりをすることもあります。関わっている人にとっては『生活のうるおい、息抜き』になっているのではないでしょうか。
去年と比較して今年の音楽会はどうですか?
会場を広げることができないので、規模を拡大することはできませんし、拡大しようとも思っていません。
去年はラジオに出て宣伝もしましたし、NHKにアプローチもしました。でも今年はそういう大きな宣伝はしていません。
仮に多くの人が会場に来てしまうと、車の渋滞などで整理員が必要になり、経費もかかります。渋滞や騒ぎなどで地元の方々に迷惑がかかってしまう可能性も出てきます。だからこれくらいの規模が限界だと思っています。
規模こそ拡大はしていませんが、周りの反応は去年と比べてすごく良くなっています。
『去年良かったから今年も行きたい』
『去年行けなかったから今年こそ行きたい』
『去年良かったという評判聞いているよ』
とても嬉しい言葉を多くの人から聞きました。
あと、イベントの実行委員の数が去年に比べて五人ほど増えました。去年は二十人に満たないほど。その規模で仲間が五人も増えることは、とても心強いです。
そして委員会の会議の回数は去年より少ないにも関わらず準備はスムーズに進んでいます。その点でも私たちは確実に成長していますね。
・・・。
・・・。
(ん・・・、倉田さんが何かを取り出して、頭にかぶりました)
「あの・・・、それは何でしょうか?」
「久慈川原権三(くじがわらごんぞう)です」
「久慈川原?」
「鬼瓦権三ってご存知ない? 昔のビートたけしがやっていたアレですよ。その鬼瓦をリスペクトしていましてね」
「いや、ちょっと・・・」
「あ、最近の人は鬼瓦権三を知らないですか。実はこれ、常陸大宮の道の駅の未公認応援団でして・・・(以下、略)」
「・・・すみません。久慈川原さんについては、後日改めてお話をうかがってもよろしいでしょうか?」
「・・・はい」
(元に戻りました)
こういった活動は周りから白い目で見られることはありませんでしたか?
きっと白い目で見られていることもあるだろうし、あいつら何を勝手なことやっているんだと思われている方もいると思います。でも自分一人だったら辛いかもしれませんが、一緒になってやってくれる仲間がいるので平気です。
それに、自分がやっていることは間違っていないという自信もあります。
最後に今後のご自身の展望などありましたらお聞かせください。
今は都市部への人口の集中が進んでいて地方ではどんどん人が減っていますよね。そんな中で、地方も良いんだよという価値観の輪を広げたいと思っています。
笠間には笠間焼があって、北海道のニセコには大自然があって、私たち常陸大宮がそういうものと競っても勝てないですよね。
では常陸大宮は何を売っていくかというと、それは人です。川原の音楽会のようなイベントをやる人がいるぞということを周りに伝えていき、もっと面白いことをやってくれるのではないかと思わせたいですね。
あとは周辺の観光資源や観光イベントを繋いでいきたいとも思っています。
川原の音楽会が開かれる五月十五日ですが、他にもいくつかのイベントと重なってしまっています。それらは競争相手ではなく協力相手です。お客さんを取り合っても仕方がないことで、まずはあっちのイベントに行って、その次に川原の音楽会に来てもらって、最後にそっちのイベントを回ってもらうような、そういうイベント同士の繋がりや調整もできればいいと思っています。
という色々とやっていきたいことはあるのですが、時代の流れに逆らうつもりはありません。日本の人口はどんどん減っていて常陸大宮だって例外ではないでしょう。でもそんな大きな流れに逆らうことではなく、ちょっと別の流れに乗っていくように、しなやかに生き延びていきたいと思います。
倉田さんにはお仕事や川原の音楽会の準備で忙しい中お時間割いていただき、大変ありがとうございました。
川原の音楽会の当日の様子は後日お伝えしますのでお楽しみに。
※ 関連サイト:川原の音楽会Facebook
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