茨城県常陸大宮市地域おこし協力隊の間瀬です。
緒川地域と山方地域の盛金地区では、小中学生をご自宅に迎え、農業体験・田舎体験を提供する農家民泊事業を行っています。
受け入れ体制は、学校行事の教育旅行という形で受け入れるもので、一般のお客様の受け入れではありません。
将来的には一般のお客様の受け入れもできれば…、と私は思っています。
というところで、このたび、体験型民宿の経営をしている方のお話を伺ってきました。
目次
1.民宿プロフィール
2.オーナープロフィール
3.体験内容
4.民宿の経営について
5.コラム『豊丘村の有害鳥獣駆除』
6.視察の感想
1.民宿プロフィール
所在 : 長野県下伊那郡豊丘村
開業 : 2012年
建物 : 築100年の古民家、囲炉裏あり
収容人数 : 13人
冬の最低気温 : -10℃前後
アクセス : 東京から約3時間半(距離260km)、名古屋から約2時間(距離150km)
※高速道路利用の場合
ホームページ : http://www.toyooka-higashi.com/index.html
ブログ : http://toyooka-higashi.sblo.jp/
宿は山の中の集落にあり、観光地ではない。
歩いて行ける範囲内に、コンビニ、自販機、レストランなどはない。
2.オーナープロフィール
壬生紘彰(みぶひろあき)さん。
男性。埼玉県越谷市出身。
田舎暮らしを目指して2004年に祖父の暮らす南信州に移住。会社勤務の後、2012年に独立して農家民宿を開業する。
狩猟免許を取り、猟友会に所属し、獣の解体にも精通。
漁協にも所属していて、漁業権も持っている。
キノコ山も持っている。山を持っているというか、キノコを採る権利を持っている。
日曜大工もでき、宿の火鉢テーブルなどを自作している。
農業も営み、畑や田んぼも持っている。そこで採れた農産品が宿の食事にものぼる。
壬生さんのブログを見ていただくと、その生活の様子がよく分かります。
田舎暮らしに関することなら、何でもできるという印象を受けました。
3.体験内容
小中学生が教育旅行で宿泊したときのメニューの一部を紹介していただきました。
(1) 滝に行く
急な坂道を下り獣道を歩き、苦労の先に滝があります。不動明王を祭ったとされるお堂が、滝のそばにあります。日本人には自然万物に神様が宿るという宗教観があり、その信仰の話とともに、滝を案内してもらいました。
(2) キノコの圃場視察
数種類のキノコの原木が置かれています。
(3) カブトムシ養殖場の視察
夏にはカブトムシでいっぱいになるそうです。最大の敵はモグラとのことで、地下に柵を埋めています。この養殖場を見た子どもたちの喜ぶ顔が目に浮かびます。
(4) 銀杏拾い
夕飯用の銀杏を拾います。一回では食べきれないくらいの銀杏が採れました。一本の木から、こんなにも多くの銀杏が採れるのですね。イチョウの木の下には、まだまだいっぱい残っています。
(5) くくり罠実演
有害鳥獣駆除(シカ、イノシシ等)の話とともに、くくり罠の実演をして頂きました。相当評判の良い罠だそうで、気に入ってお持ち帰りになったお客様もいたそうです。
(6) シカ毛皮のなめし作業
駆除されたシカの多くは利用されずに処理されてしまうそうです。オーナー様は極力、肉も皮も利用するよう努めています。
(7) 薪による風呂焚き
一日の疲れを癒すお風呂。スイッチを押すだけでは、お風呂に入れません。
4.民宿の経営について
(1) 宿の稼働率
一年目はお客様も少なかったそうですが、五年目となる去年では、多くのお客様に宿泊していただける状況になりました。
夏休みの期間はほぼ毎日お客様が宿泊されるそうです。
お客様はファミリー層が一番多く、その次に小中学生だけのグループ。そして、大学のゼミ合宿や外国人のお客様もいるとのことでした。
一泊二日程度の宿泊が一番多く、長くても三泊四日とのことです。
(2) 宿の営業活動や情報発信について
営業活動や情報発信はホームページとブログのみで、広告のお金はかけていないとのことでした。
宿泊の予約はホームページ内の受付フォーム、Airbnb(エアビーアンドビー)、電話からできます。
外国人客は、Airbnbによる予約だそうです。
(3) 経営上の悩み
冬の時期の宿泊のお客様が少ないことが課題です。
今後の計画として、閑散期の冬はジビエ(シカ・イノシシ)ビジネス事業を展開していきたいとのことでした。
今は田舎体験が流行っているためお客様が来てくれています。流行が去ったときにどうなるかの心配もされていました。
5.コラム『豊丘村の有害鳥獣駆除』
五年前はひどかった有害鳥獣被害は、近年ほとんど見かけなくなりました。
これは地域の猟友会の活躍によるもので、有害鳥獣駆除の優良地区として、自信を持って推薦できると自信満々です。
これだけ駆除できたのは、それだけ多くの人・猟友会が努力をしたからでした。その努力に源には、駆除しなければ生活できない状況にまで差し迫っていたからこそ、真剣に取り組んだのだと仰っていました。
現在、豊丘村の猟友会の皆様は、イノシシやシカがいなくなり寂しがっているそうです。
多くの自治体で被害に悩まされている中、イノシシやシカがいなくて寂しがっているなんて、ちょっと面白い話ですね。
6.視察の感想
「農家民宿ひがし」の魅力は、農業、林業、漁業、狩猟業といった一次産業をオーナーの壬生さん自らが実践しているということ。
その実践している姿に多く人が共感を持っているということ。
そこに尽きると思いました。
豊丘村は、長野県の中でも南に位置しており、積雪もさほど多くありません。
都会からの距離や気候など、常陸大宮市と似ていると思いました。
農家民泊の今後を考える上で、とても参考になる事例ではないでしょうか。