常陸大宮市で頑張る農家さんにインタビュー!Vol.2 野上勉さん

東京でサラリーマンとして働くこと13年。
それまで農業とは無縁だったにも関わらず、結婚を機にお米農家の道へ。

茨城県常陸大宮市の長閑な環境で、美味しいお米とネギの生産に励む野上勉(のがみつとむ)さん。

そんな野上さんに、無縁だった農業の世界に飛び込んだときのこと、お米のこと、ネギを生産することになったきっかけ、今後の目標など様々なお話を伺いました。

話を聞いた人:野上勉さん

野上勉さんのプロフィール
1978年10月26日生まれ、千葉県柏市出身。
東京でのサラリーマン生活13年を経て、
結婚を機に奥様の実家がある茨城県常陸大宮市へ移住。
婿としてお米農家の道へ。現在はお米以外にネギの生産も手掛けている。
そのほか、農業後継者育成クラブ「常陸大宮5Hクラブ」代表など。
★SNSは以下より★
Instagram(お米農家 のがみ@okome_farmer_nogami)

無縁だった農業の世界も今年で9年目に突入。”とにかくやってみる”精神で広がった人との縁

ー常陸大宮市でお米農家になった経緯を教えていただけますか。

自分はもともと、農大を出て、修行して、一から農業を始めたというわけではないんです。
千葉県で生まれて、東京都千代田区の会社でサラリーマンを13年間していました。
妻とはその会社で出会って。社内恋愛の末、結婚をすることになりました。
妻の実家に挨拶しに行ったときのことです。
妻は三姉妹で、一番上のお姉さんが結婚して嫁いでしまっていて。
妻が二番目だったんですけど、もし良かったら、
婿で来てくれないか、継いでくれないかという話になったんです。
それはそれで転機だなと、これも縁だなと思って、会社を辞めて、こちらへ来ました。
▲お米農家に婿入りした野上さん。稲刈りをする様子(画像提供:野上勉さん)

ー婿入りしたことがきっかけで、常陸大宮市で農家になったのですね。

そうなんですよ。平成25(2013)年9月に常陸大宮市へ来ました。
サラリーマンとして働いていた13年間は、朝6時に起きて、6時半には家を出て、
8時に会社、夜9時10時頃まで残業して、11時頃に家に帰る、そんな生活をずっと繰り返してて。
毎日スーツを着て、サラリーマンをしていた人間がいきなり作業着で農作業って、
最初はどうしていいのかよく分からなかったですよ。

ー事前知識も何もない状態で農業の世界に飛び込んだということですよね。不安などありませんでしたか。

正直、結構何も考えないタイプです(笑)。
確かに事前準備だったり、調べることだったり、ある程度そういう部分も必要だと思います。
だけど、やってみればどうにかなるだろうという部分も大きいのかなと。
とにかく何でもやってみないと始まらないですよ。

ー野上さんは、チャレンジ精神がありますよね!”とにかくやってみる”という中で何か問題が起きたことはありましたか。

常陸大宮市へ来て、最初に発生した問題としては、知り合いが全くいないということです。
最初の1年間は、ほぼ家族か、うちに来た人と会話する程度でした。

ーそういった中で、人との繋がりが広がったきっかけなどはありますか。

最初は普及センター(※1)から声がかかったことがきっかけです。
普及センターが主催する講習会があって、そういったものに参加するようになりました。
その際に「常陸大宮5Hクラブ(※2)」の存在を知って、そのときも特に何も考えず(笑)
入りますと。
とりあえず入れば、新たな人との関係性や縁ができるかなと思ったんです。
その他だと、うちがいつも頼んでいる農機具屋さんとプライベートでも仲良くなったり、
5Hクラブ以外だと、JA常陸に青年部というのがあるのですが、
そこにも入らないかと声をかけてもらって、いつも通り何も考えずに(笑)
入りますと。
やっぱりどんなきっかけでも出会ったことには意味があって、
その縁をどう活用するかは自分次第なのかなと思います。
自分の場合は、とりあえず何でもやってみる!でなんとかここまで来ました。
※1…県北農林事務所常陸大宮地域農業改良普及センター(常陸大宮市野中町3083-2)。常陸大宮市・大子町の農産物の生産振興、販売力強化と販路開拓、経営体の確保・育成、魅力ある農村の創生に関する業務を行う。
※2…平成24(2012)年5月に6人のメンバーで開始。経営品目はナス、ネギ、トマト、西洋野菜など多種多様だが、毎月1回の定例会を開催し、イベント活動の打ち合わせや意見交換などを行う。

ただ待っているだけでは意味がない。「常陸大宮5Hクラブ」の活動を通して地域を盛り上げたい

ー先ほども少しお話に上がった「常陸大宮5Hクラブ」ですが、現在代表を務められていますよね。活動内容など教えていただけますか。

そうですね。
ざっくりとですが、一応4月5月にクラブの皆で目標を決めて、今年はどうしていくか話をしています。
コロナになる前は、道の駅で大体年3回~4回、試食販売などのイベントをしていました。
クラブのPRのために、自分たちで栽培した農産物に一目で分かるようにステッカーを貼ったり、
クラブ活動のチラシを作成したりしましたよ。
試食販売は、直接手渡すことで、地域の皆さんと話すきっかけになったりもして。
前は当たり前だったことが、今はなかなかできないことが寂しいしもどかしいですけど。

ー消費者の方と直接話せる機会っていいですよね。そのほか、コロナ前にイベントへの出店などはありましたか。

ありましたね。
西塩子の回り舞台(※3)で、クラブのメンバーのお米や野菜を使ったカレーを
子どもたちを中心に100食ほど販売しました。
カレーの前のときは、トルティーヤの販売もしました。
今はコロナでイベントもなかなか難しいですけどね。

※3…日本最古の組立式歌舞伎舞台。約3年に1度大宮公民館塩田分館グラウンド(北塩子2163)に地元の木材や竹を用いて組み立てられ、子ども歌舞伎や地芝居、様々なイベントが実施される。

ーこうした活動を通して何か感じたことなどはありますか。

自分たちは農業という分野で活動させてもらっていますが、
考え方の基本はみんな一緒だと思うんです。
高齢化が進む中で、地域をどう盛り上げていくのかというところだと思います。
ただ待っているだけだと、見える未来は衰退していく、ただそれだけ。
自分たちができることをやっていくしかないんです。
なので、自分はクラブの活動を通して、少しでも地域を盛り上げていけたらなと思っているし、
様々な縁で、出会った人たちと重なる部分があれば、何か一緒に活動していきたいとも思っています。

最初はお米の兼業農家としてスタートを切った野上さん

ー常陸大宮市に来てから無縁だった農業を始めたということですが、そのときからお米がメインだったのでしょうか。

そうですね。
常陸大宮市に来た当初は、春から秋の間はお米を作って、冬の間は、土建屋で下請けをしていました。
ただ、うちの体制が時代背景にそぐわなくなってきたなという感じがあって。
3~4年経ってから、土建屋の下請けをやめて、農業一本にしようと決めました。

▲田植えをする野上さん(画像提供:野上勉さん)

ーそうだったんですね。お米を作るにあたっては、何かこだわりなどはありますか。

正直なところ、まだそこまで至ってないというのが本音です。
まだまだ必死に作っているという感じです。
お米に関して言うと、毎年環境が違うので、毎年違うお米になるんですよ。
今年に関して言えば、うちのお米はトータルすると品質が良くないです。
こだわって作ることはもちろん大切だと思うのですが、
やっぱりベースの部分はしっかり持って作らないといけないなと今年は強く感じています。

▲稲刈りの様子(画像提供:野上勉さん)

ー基本をしっかり持つということですね。野上さんのお米はどこで販売していますか。

そこまで広く販売をしているわけではなくて。
うちに直接買いに来てくださる方や
その他、日立市にカインズホームがあって、そこで販売もしています。
売れてなくなったら、また出しにいくという感じです。

ーそうなんですね。飲食店などに提供はされていますか。

お米は月に1回、常陸大宮市役所のすぐ近くにある大塚ラーメン(※4)さんに出しています。
大塚ラーメンさんがいつも買ってくださってて。
有難い話ですよ。
飲食店はそれくらいですね。

※4
住所:常陸大宮市中富町3101-129
電話番号:0295-52-1790
アクセス:常陸大宮駅から495m

農業一本と同時にネギの生産もスタート!現在では洋野菜・リーキも手掛ける

ー今はお米以外にネギの生産もされていると思いますが、ネギに取り組んでみようと思ったきっかけなどはありますか。

ネギは土建屋をやめたタイミングで始めました。最初は全く分からなくて大変でしたよ。
それこそ最初は普及センターに助けてもらいながら、なんとか作ったという感じです。
最初の年はネギを4000本作って、翌年は、3万本に増やしました。
とりあえずどうにかなるだろう精神です(笑)。
売れますから、ネギは。

ーお話を伺っていて思ったのですが、野上さんはやはり、とりあえずやってみる!という気持ちが強いですよね。

そうですね。基本的に突撃するタイプの人間なので(笑)。
ネギは3万本をとりあえずどうにか売りました。
2年目か3年目のときに、道の駅の方に、「これ作ってみたら面白いんじゃない」と紹介されたのが赤ネギでした。

▲野上さんのネギ畑。赤ネギやなべちゃんゴールドといった品種を育てている

ーなるほど。赤ネギもとりあえずチャレンジ!という感じでしょうか。

そうです。せっかく紹介していただいたので、やってみようって。
ネギはペーパーポット(※5)という育苗箱に専用の播種器具を使って種を蒔くんですよ。

▲ペーパーポットに植えたネギ(画像提供:県北農林事務所常陸大宮地域農業改良普及センター)

もうそういう専用のセットが全部売ってて。
昔BB弾ってあったじゃないですか。
BB弾くらいの大きさの種を蒔くんです。

昔に比べたらたいぶネギというものが植えやすくなったというか。
それで、通常のネギを始めたので、赤ネギもとりあえずやってみようと。
本当はペーパーポットに蒔くためにコーティングしてある種を蒔くのですが、
コーティングしてあるものは何粒からといったように購入数が決まっていて。
それを知らなくて、普通に種を購入して開けてみたら、とても小さい種が出てきて。
BB弾くらいの大きさだと思っていたので、何これ!って驚いてしまって(笑)
ピンセット持って、たまにしかかけない眼鏡をかけて、1個1個やりました。
もう本当に大変でしたけど、赤ネギを作って、道の駅に出してみたら、売れたんです。

▲野上さんが育てる赤ネギ

※5…特殊加工した紙で作られた折りたたみ式の育苗箱。通気性、浸水性に優れている。

ーそれは大変でしたね。そして、ネギも様々な種類があるのですね。

そうなんですよね。通常のネギ、そして赤ネギと生産して。
で、あるときに、12月ぐらいだったと思うのですが、5Hクラブで忘年会か新年会をしたときに、
笹島さん(※6)とお酒を飲みながら、リーキ(※7)という品種を紹介してもらって。
やってみようかなと思ってるという話を聞いて、面白そう!自分もやってみますって!
これまたすぐに、妻にネットで種を買ってもらいました。

※6…笹島具視さん。常陸大宮5Hクラブの初期メンバーで、常陸大宮市地域おこし協力隊インタビューの1回目を引き受けてくださった。
※7…地中海沿岸原産の野菜でリーク、西洋ネギ、ニラネギ、西洋ニラネギなどと呼ばれる。変わった葉っぱと太さが特徴。国内産は非常に珍しい。

ーリーキに関しても特に知識もなく、チャレンジという形でしょうか。

もちろんそうです(笑)。
リーキを作ってみたはいいものの、これをどうやって売るんだろうと悩みました。
リーキは基本的に輸入物なんですよ。ヨーロッパで使うネギで。
国内産は殆ど出回らないかな。おそらく常陸大宮市で生産しているのは自分だけだと思います。
輸入物なので、お高いんですけど。
もしかしたらこれ、自分で作って、高く売れるかもと思って、道の駅の人に相談しました。

▲野上さんが育てるリーキの畑。1本1本丁寧に掘り起こしをしている。

ー私もリーキという品種は初めて聞きました。道の駅以外では、どこで販売はされていますか。

どうしようかなと考えていたときに、
義理の弟が水戸の青柳にある市場に勤めているのですが、
そうだ、弟に頼ろう!と思って。
で、弟のところに持って行ってやっとさばけるようになったという感じです。

ーなるほど。市場でリーキを販売しているのも野上さんだけでしょうか。

おそらく自分だけだと思います。こんな変わったものを作るのは自分くらいですよ(笑)。
リーキというものを使うのはレストラン系になるのかなと思っていて。
余裕があればですが、今後ちょっと動きたいと思っているのが、レストランへ必死に営業するしかないのかなと。
コロナがなければ軽トラックの荷台に積んで、東京に行って売ってくればいいやってなりますけど、
それもなかなか厳しいですからね。
現時点での目標はリーキをレストランに卸したいということですかね。

ーリーキをレストランでということですが、まずは常陸大宮市内で始める予定ですか。

市内というより、まずはどんなレストランでリーキを使ってもらえるかというところを
リサーチしていかないとダメかなと思っています。
リサーチして、実際にリーキを使ってみてもらって、反響を見てみたいなと。
最初だから値段は高くなくてもいいんですよ。安くてもいいから使ってみてもらった反応がみたいです。

ーリサーチ凄く大切ですよね!ちなみにですが、野上さんがおすすめする、リーキを使った料理などはありますか。

おすすめなのは、ポトフです。
リーキは焼いてしまうと、外の部分が固くなってしまうんですね。
焼くのであれば、蒸し焼きにすると、外まで柔らかく食べられます。
単純に火にかけてしまうと、外が固くなるので、めくって食べるような形になってしまいますね。

ーポトフが良いのですね!ポトフを含めて、リーキを使った料理についてはどこかで発信などされていますか。

道の駅にはリーキを使ったレシピがラミネート加工しておいてあります。
その他にインスタグラムを使用しているのですが、
これは妻にお願いしているので、妻が発信しているかと思います。
リーキってやっぱり食べ方が分からないという人が多いと思うので、
食べ方や調理の仕方が少しでも分かれば、買ってみようとなるのかなと。
後は、青柳の市場に出しているとき、
妻にリーキのポップとリーキの料理が2つほど載っているものを作ってもらってPRしました。
だいぶ売れるようにはなりましたけど、まだまだという感じで。
頑張りたいなと思っています。

とにかくやってみないと分からないですから!!

▲道の駅かわプラザのリーキ販売コーナー

自分の役目を日々果たし、子どもたちにつないでいきたい

ー様々なお話どうもありがとうございます。最後に今後やっていきたいことや目標などがあれば教えてください。

農業って基本的にみんな一からスタートするものなんです。
一から自分の世界を作り上げていくという。
だけど、最初にも少しお伝えしましたが、
自分の場合は、既にお米農家である野上さんのところに入って、継いでいる状態になります。
妻と結婚して子どもが生まれて、自分は正直血が繋がっていない赤の他人だけど、
自分の子どもたちに、この農家を継いでもらえるよう、継続しつつも広げて、
子どもたちに渡していきたい、それが自分の夢というか目標というか……役割なのかなと思っています。
毎日忙しくて大変というのが本音ではありますが、忙しいってことを言い訳にしてはいけないと思うんです。
それを言い訳にしてしまうと、いつでも手を抜けるし楽してしまうので。
だから自分頑張れよっていう話で。
頑張っていれば小さくても必ず結果は出ますから。
なので、子どもたちへの橋渡し役として、日々突き進むのみだと思います。

ー自分の役目を日々果たしていくこと、素敵だと思います。本日はお忙しいところ、誠にありがとうございました!

取材・文・写真 谷部文香
インタビューサポート 雅農園 海野雅俊さん

洋野菜・リーキを使ったおすすめレシピ紹介

野上さんへのインタビューを読んで、リーキを食べてみたくなったという皆様へ、リーキを使ったおすすめレシピをご紹介します。

(1)リーキのポトフ

▲リーキを使ったポトフ(画像提供:野上勉さん)

お好みの野菜を適当な大きさに切ってコトコト煮込むだけの簡単料理です。
味付けはコンソメのみ!!
リーキはトロトロで甘くなります。
おすすめの具は、手羽先、ソーセージ、ベーコンです。
お肉系を入れる際は、最初に焦げ目を付けてから煮ると旨味が引き立ちます。

(2)肉巻きリーキ

▲肉巻きリーキ(画像提供:野上勉さん)

①リーキを3cm幅くらいに切って、豚バラ肉で巻く(※薄い豚バラ肉でOKです)
②塩コショウを振り、小麦粉をササっとまぶしてフライパンで焼く
③豚バラ肉の赤い部分がなくなったらお酒あるいは水を少し入れ、蓋をして約10分蒸し焼きにする(※蒸し焼きにすることでリーキが甘く柔らかくなります)
④お皿に盛り付けて完成(※焼いたスライスガーリックなどを乗せても美味しくいただけます)

野上勉さんへのインタビューを終えて

▲2021年10月15日(金)インタビュー取材の様子

野上さんへのインタビューで印象的だったのは、
とにかくなんでもやってみる、やってみないと始まらないというチャレンジ精神。
インタビュアーである私は、どちらかというと新しいことに対して
事前情報がない状態で始めることがとても不安なタイプなので、
野上さんのお話を聞き、勇気をもらえたそんな時間でした。
また、大変お話上手な野上さん。
1時間予定だったインタビューも気付いたら1時間をとっくに超えていました。

インタビューとは別の脱線トークもこの日の良い思い出です。
この場をお借りして、お忙しいところ、第2回目のインタビューを引き受けてくださり、誠にありがとうございました!

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